~立川織物とムラ糸の関わり~
いつの頃かはっきりと覚えていませんが、40年くらい前になるのか、見附の織物の営業さんと親父(藤太郎)と私(治秀)の3人で、糸商さんの原糸が陳列してある棚から落綿(くず綿)を集めて紡績した糸を見つけ、最初は軍手用かな?と思いましたが、面白そうなので開発見本を作ることにしました。
太さは10番でした。その糸を染めるために綛上げ(かせあげ)をしたところ風綿(綿ぼこり)の他に紙くずが舞ったりして、そのお詫びに当時の糸商さんの常務が菓子折りを持って走り回ったと聞いています。
開発見本の生地を見てとても気に入ってもらった東京の問屋さんが1年間毎月発注するから他には見せないでくれとの事。約束通り1年間発注をもらいました。今までなかった見え方の生地でとても好評だったそうです。
それもこれも糸商さんの常務が頑張ってこのムラ糸を見捨てずにいてくださったおかげです。
今日では研究開発が進み前述のような粗悪な糸はありませんし、当時は10番の太さしかありませんでしたが、今では5番、8番、16番、20番、30番等々色々な太さのムラ糸があります。
この度、立川織物が製造販売する綿つむぎにはこのムラ糸を使用しています。
亀田縞にも同じようなムラ糸を使った生地があります。
綿の持つあたたかさ、柔らかさとつむぎ風の見え方に独特のものがあります。
どこかなつかしく和を感じていただける生地です。
織りながらムラ糸を見つけた時のことをちょっとだけ思い出したりしています。
ムラ糸とは:ナチュラルな節のある糸
綛上げ(かせあげ):糸を染める為に巻きなおす工程の一つ